【風が吹くとき】風が止むとき

受容と変容は両立できる

我が家では、子どもたちがタブレットを使うときは「タイマーをつけて時間を管理する」というルールを設定している(学校に行かずにホームスクーリングをしているので、タブレットやゲームに触れる時間が長いため、ルールが必要という事情がある)。

タイマーをつけ忘れたとき、子どもたちは「次からは忘れないように気をつけます!」と言う。その言葉を受け止めつつ、「忘れないようにすることはできないから、気をつけなくていいよ」と返す。人は忘れるようにできている。だから、忘れないようにするのではなく、忘れても時間を守れるような工夫をしてほしい、と伝えるようにしている(それだけでうまくいくわけではないけれど)。

「忘れないように気をつけること」と「忘れても問題が起きないような仕組みを作ること」は両立できる。同様に、「自分の中の無知と従順を自覚し、受容すること」と「無知と従順さを捨てられるように変容していくこと」だって両立できるはずだ。

正しいこと、適切なことが何かわからないときがある。わかっていてもできないことだって多い。できない自分から目を逸らしたくて、本来関係ないことに目を向けてしまうこともある。自分の無力さを棚に上げて、権力の判断に委ねてしまうこともある(批判的な振りとセットで)。無知と従順は人間の本質なのかもしれない。だから、この作品は「100年後も残したい名作」と呼ばれているのだろう。その可能性は高い。でも、そうじゃない可能性を信じてみたい。受容と変容をどうにか両立させて、100年後の人たちがこの作品を見て「昔の人たちって今とぜんぜん違うんだな」と冷ややかな目でこの作品を見る未来を信じてみたいと思う。

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■風が吹くとき(原題:When the Wind Blows)
原作:レイモンド・ブリッグズ『風が吹くとき』
脚本:レイモンド・ブリッグズ
監督:ジミー・T・ムラカミ
主題歌:デヴィッド・ボウイ「When the Wind Blows」
音楽:ロジャー・ウォーターズ
製作:ジョン・コーツ
アニメーション:リチャード・フォードリー
日本語吹替演出:大島渚
出演:ジョン・ミルズ、ペギー・アシュクロフトほか
出演(日本語吹替):森繁久彌、加藤治子ほか
配給:チャイルド・フィルム
公式サイト:https://child-film.com/kazega_fukutoki/

<引用文献>
・磯野真穂『コロナ禍と出会い直す 不要不急の人類学ノート』(柏書房)

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S H A R E
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1984年生まれ。兼業主夫。小学校と保育園に行かない2人の息子と暮らしながら、個人事業主として「法人向け業務支援」と「個人向け生活支援」という2つの事業をやってます。誰か仕事をください!