亡くなったカーミーの兄、マイケルはかつて言った。
「人生には特別な瞬間がある。お祝い、いい時間、喜びの瞬間。そこには必ず食べ物がある。」
美味しい料理を提供し、誰かに喜ばれること。その喜びだけが「The Bear」に所属する全員の共通点だ。
人生には下り坂の時もあれば、思いがけずうまくいく時もある。喪失やトラウマを誰もが抱えて生きている。
だが、レストランでは時々まるで奇跡のような美しい瞬間がある。
その一瞬のために彼らは共に走り続けるのだろう。
自分自身も30代を過ぎ結婚し子供も産まれ、過去にはそれなりの喪失や挫折も経験した。仕事も人生もこの先そう大きくは変わらないだろうと確信し諦めてもいた。
だが、中年を過ぎた大人達が自分の生きるその場所で何かに奮闘しまた人生を再スタートしていくこのドラマを見ていると、自分の中にある得体の知れぬ何かがじわじわと熱くなってくるのを感じてくる。
「まだ自分にもやれることはあるかもしれない」
問題は何一つ解決していない「The Bear」シーズン3を見終わった時の私は、なぜだか不思議と勇気づけられていた。
──
■一流シェフのファミリーレストラン(S3、原題:The Bear)
監督:クリストファー・ストーラー
脚本:クリストファー・ストーラー、ジョアンナ・カロ、アレックス・ラッセル
出演:ジェレミー・アレン・ホワイト、エボン・モス=バクラック、アイオウ・エディバリー、ライオネル・ボイス、ライザ・コロン・ザヤス、アビー・エリオット、マティ・マセソンほか
配信:Disney+
(イラスト:水彩作家yukko)