彼女の言葉の現実感は中年の私自身とも重なった。
自分には秀でたものが何もない。もっと若い頃には一つのことに夢中になって情熱に駆られていたはずだったけれど、気が付けば子供の世話や職場での毎日の変わらない現実にただ追われていた。
「仕事が見つからない。相手はみんな私よりも子供なの。でも、同時に彼らは美しい。相手が子供だと言って怒るのは簡単よ。でも、こうも思うの。彼らみたいになりたい。嫉妬しているのよ。」
現在のティナは、休日に新しいメニュー考案のため厨房に立ち、同僚と切磋琢磨する。自分よりもずっと若い料理人シドニーに褒められたら思わず笑みが溢れてしまうほど嬉しい。彼女は何かに突然目覚めて変わったわけではないことは、このエピソードを見ればよくわかる。
毎日同じ時刻にアラームをかけて起床し、歯磨きをして、家族のために食事を用意する。真面目に働いて家族と自分の生活のために、このルーティンを何年も続けてきた。
「どんなことだってする。皿だって洗うし、床掃除もする。なんだってする。」
実直に生きてきたからこそ、どんな状況に置かれても一生懸命に取り組めるティナの現在があるのだと思う。何かの才能に秀でて、大きな夢を追いかけて生きていなくとも、人にはいつでも輝ける瞬間がある。シーズン3の中でも特に美しいエピソードの一つだ。
