【一流シェフのファミリーレストラン(S3)】この土地で生きると決めた大人達の人生の物語

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兄のマイケルが遺したレストラン「THE BEEF」をリニューアルオープンしたカーミー。「The Bear」としてオープンするも、「絶対服従が規則」「毎日違う料理を提供する」という宣言にスタッフは戸惑いを隠さない。
監督、脚本を手掛けたのはクリストファー・ストーラー。主要キャストは前シーズンと変わらず。シーズン3は2024年7月よりDisney+にて配信されている。

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「一流シェフのファミリーレストラン(原題「The Bear」)」は、Disney +で配信中のテレビドラマシリーズだ。世界的に有名な一流レストランのシェフだった主人公カーミー(ジェレミー・アレン・ホワイト)は、自ら命を断った兄マイケル(ジョン・バーンサル)が残した地元シカゴのレストランを継ぐことになる。働くスタッフは皆バラバラで怒号が飛び交う店内は油まみれだ。経営的にも危機的な状況の中、どうにか店を立て直そうと試行錯誤する。

「The Bear」で働くシェフのほとんどは中高年の男女だ。主人公のカーミーと、彼と共に店の再建を主導してきたスーシェフのシドニー(アイオウ・エディバリー)以外はほぼ前身の店「THE BEEF」からの古参メンバーである。
皆それぞれに家族や仕事や人生に挫折や喪失を抱えながらも、ここシカゴの土地に根ざして普通に生きている人たちだ。
時に喧嘩したり時に支えあったりしながら、この小さなレストランの中で共に奮闘する。

シーズン3はようやく心機一転オープンした「The Bear」が抱えるあらゆる問題が露呈していく。決して順風満帆とは言えないレストランで苦悩するシェフたちの複雑な心情や内面の葛藤は、まるでキャリアや人間関係で悩みながら現代に暮らす私たちの物語そのものである。

カーミーは、過去に一流店で日常的に受けていたパワハラによって今もなお心に深い傷を負ったままでいる。彼は皮肉にも自分を傷つけた上司とまるで同じような態度でスタッフに接し、「絶対服従」という訓示でスタッフを統括しようとする。

スーシェフのシドニーは、独善的で不安定なカーミーに内心嫌気が差し始めている。今よりも条件の良い引き抜きのオファーを受けているが、「The Bear」のシェフ達の顔が脳裏にチラつき決断できないままだ。ホールもキッチンも他のシェフ達も表面的に見えなくとも、実際にはそれぞれに家族や人生の事で悩みながらギリギリの精神状態で店に立っている。デザート担当のマーカス(ライオネル・ボイス)は母を亡くしたばかりで喪失しているし、フロア担当のリッチー(エボン・モス=バクラック)は前妻の再婚の知らせに複雑な心境を抱えている。

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S H A R E
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映画やドラマについてPodcastでおしゃべりをしたりテキストを書いたりしています。現在育休中の会社員。