そろそろ別れたい映画

作中で唯一、オッペンハイマーとベッドをともにしたジーン・タトロックが述べたことは、非常に示唆的だ。

「あなたの数少ない理解者を見捨てないで。きっと助けを求める日がくるわ」

「オッペンハイマー」脚本 P41より筆者訳)

現実世界のオッペンハイマーも当然ながら謎が多く、素朴に言えば、常人には理解できなかった人物のようだ。

ただそもそも、他人のことなど容易に理解できるはずがない。だが厄介なことに、オッペンハイマーはそんな常識を忘れさせてくれる。まるで他人を完璧に理解したかのように振る舞い、そして完璧に頼まれ仕事を完遂してみせる。だが残念なことに、そんな彼を誰も理解することはなかった。これを悲劇と呼ばず、何と呼べば良いのだろうか。

終わりに

「あれ」は何だったのだろうか。

そんなふうに「あれ」と括弧にくくることで、自分から遠い存在として突き放しつつ、恐る恐る近づいてみることは、意外と楽しい。なぜなら、「答え」に辿り着くことなんて全く期待せず、映画についてただ考えているだけであり、それはつまり映画館での体験を再現していることと同じだから。

でも、ずっと座り続けているとお尻と腰が痛くなるように、そろそろ席を立っても良いころだ。

少し休憩して、また次の映画を見に行こう。

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S H A R E
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映画鑑賞が趣味なんですが、毎回必ず寝てしまいます。映画館で寝落ちしない方法をご存知の方はぜひ教えてください。