「オッペンハイマー」とアカデミー賞のメッセージ

映画ファンの注目を一心に浴びていた「A24」の動向はどうかというと、上半期にもいくつか作品を公開しています。

ソフィア・コッポラがエルヴィス・プレスリーと若くして結婚したプリシラを題材とした「プリシラ」。ソフィアらしいセレブの孤独を煌びやかな衣装や美術セットとともに描いた作品でした。

韓国系アメリカ人との三角関係のラブストーリーを描いた「パストライブス/再会」も、アメリカナイズされたアジア人が主人公なのではなく、東洋の価値観でアメリカを舞台にしたアメリカ映画という点が新しく、今っぽい作品でした。作品としての評価も高いです。

さらには伝説のプロレスラー一家を描いた「アイアンクロー」。家族が次々と不幸に見舞われてしまった実話をベースとした不穏感漂うA24らしい家族ドラマ。ザック・エフロンら俳優陣がムキムキのマッチョなプロレスラーとなっているところも見どころです。

それぞれは良作なのですが、すごくヒットした訳でも話題になった訳でもなく、A24といえど一時の勢いはなくなってきたことを感じさせる上半期でした。

上半期の最後、6月を代表する作品「あんのこと」。入江悠監督の中でも代表作になるかもしれない社会派の作品。社会の底辺で行き場を失いながらも一筋の光に救いを見出そうとする少女を、河合優美が見事に体現しています。

洋画ではアレクサンダー・ペイン監督の「ホールド・オーバーズ 置いてけぼりのホリディ」。クリスマス休暇に寄宿学校に居残りとなってしまった頑固教師と訳あり給食おばさんに問題児の生徒の交流を描くドラマ。

違うタイプの作品ではありますが、どちらも心に響く内容で年間を通しても話題になっていくでしょう。

まだまだ紹介しきれない作品もありますが、上半期はやはり前半はアカデミー賞。そこでのメッセージがはっきりしていたので、そこから今の時代を読み解けていければいいなと思いました。

ただ、全体的にハリウッド大作が少ないのも印象的。
アニメは絶好調ですが、ドキュメンタリー作品やリバイバル作品が増えているという傾向もあります。

たくさん書いてきましたが、少しでも映画選びのキッカケになればと思います。

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S H A R E
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移動映画館キノ・イグルー。全国で映画イベントいろいろ。年間300本くらい映画やドラマを観てます。インスタやnoteでも映画ネタを発信中。