「オッペンハイマー」とアカデミー賞のメッセージ

邦画の大作では、「ゴールデンカムイ」。明治末期の北海道を舞台に、アイヌが隠したという莫大な金塊をめぐって軍人や脱獄囚、新撰組の生き残りなどが熾烈なサバイバルを展開する作品です。個性的なキャラクターが登場するんですが、実写のキャストが皆んなマンガの原作に似ていてすごいです。

邦画の話題作としては、濱口竜介監督の「悪は存在しない」も挙げられます。ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞し、カンヌ、ベルリンに続き世界三大映画祭を全て制するという快挙を成し遂げた本作。元々は「ドライブ・マイ・カー」で音楽を担当した石橋英子のライブ用映像制作が発展して劇場映画となったという変わった経緯の作品です。本来スタッフとして参加するはずだった大美賀均が主演俳優に抜擢されるなど、色々な意味で変わっています。アカデミー賞を受賞して次回作は何でも好きなものを作れる環境で、こういう攻めた内容を選ぶところに濱口竜介のこだわりが現れています。

青春18×2 君へと続く道」は、藤井道人監督による青春ラブストーリー。日本と台湾を舞台にした青春物語で、岩井俊二を意識した展開もあったりして、岩井作品が好きな人であればグッとくるところもあるはず。ジミー役の台湾の俳優シュー・グァンハンは日本でも人気が出そうです。サイバーエージェントが製作に加わり、日本=台湾合作で、アジアでも大ヒットしています。座組みや戦略からといった面から、新しいことを仕掛けた作品です。

興行収入的に話題となっているのは、やはりアニメです。
今年も絶好調のアニメといえばやはり「名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)」、興行収入150億円突破というとんでもない数字を叩き出しています。
今回は、土方歳三にまつわるお宝をめぐって怪盗キッドVS服部平次をメインに函館を駆け巡る。舞台となった函館は、今やコナン祭り状態なんだとか。20年以上シリーズでやっていて、ここにきて更に動員を増やしているというのは驚異的です。

他には「劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」が100億円を突破するという快挙を達成。
烏野高校と音駒高校の試合を中心に、フラッシュバックで各キャラクター紹介、ライバル同士の因縁などが丁寧に紹介される構成は、2022年に公開された「THE FIRST SLAM DUNK」と同じです。「ハイキュー!!」を知らなくても楽しめる作りになっていて、マンガやアニメの既存ファンだけでなく、映画をきっかけに新しいファンも獲得しているのではないでしょうか。

同じように“スポ根”と言っていいのか「ウマ娘 プリティダービー 新時代の扉」が10億円を突破する大健闘。本物の競馬が元になっており、名勝負と言われた過去の本当のレースにおける馬の名前やレース結果をそのままウマ娘に置き換えられています。やけに臨場感と感動があるのは、そういった仕組みのおかげだったのかと後から納得しました。

それに、浅野いにお原作マンガの映画化「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」。とても一回では覚えられない長いタイトルですが、前章と後章がそれぞれ上半期に公開され、ヒットしています。
ある日突然、東京上空に巨大UFOが出現するという非日常な状況で女子高生たちの日常を描きながら徐々に物語がドライブしていく。人類滅亡に直面してくというスケール感と日常感、迫力と脱力が絶妙にミックスされた出来栄えで話題になりました。

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移動映画館キノ・イグルー。全国で映画イベントいろいろ。年間300本くらい映画やドラマを観てます。インスタやnoteでも映画ネタを発信中。