年間1,000人超の子どもが行方不明
観終わった後、いてもたってもいられず子どもの行方不明事件を調べた。
その結果に驚愕する。年間1,000人超の子どもが行方不明になっているらしい。長きにわたり子どもが見つからず、情報も入ってこない。そんな絶望のなかで誹謗中傷を受けている家族が実在しているのだ。救いのない物語は、紛れもない現実社会の話だった。
映画は、はじまりと終わりに映像としての光が導入されている。映画の公式HPでは本作品について「苦しみながらも光を見つけていく」と説明されている。だけどわたしはどうしても、本作品の中に光を見つけることができなかった。他者のやさしさがたしかに存在することと、光が射すことは別物ではないだろうか。
こうなってしまったら、娘が見つかること以外に「光」はないとわたしは思う。どれだけ周りがやさしくても、どれだけ夫婦の絆が強いとしても。
ではこの物語の先に「光」を見つけるにはどうすればいいのだろう。
誹謗中傷や偽情報を適切に取り締まること?報道が”まとも”になること?それとも夫婦に適切な支援が施されること?
そうかもしれないけど、そうじゃないなと思った。きっともっと小さくて身近なところ。たとえば報道のいち視聴者であるわたしが、行方不明者の顔を覚えること。画面に映る他人を憶測でジャッジしないこと。そして書き手としてのわたしが、慎重に言葉を紡ぐこと。すこしでも抵抗を感じる表現に立ち止まること。
他にもまだあるかもしれない。
そうやって、観た人がひとりひとり、光を探さなければいけないのではないか。そうしなければ「光」が存在しないという絶望と、観た人に光探しを委ねるという希望が描かれているのではないか。
だとしたら、この光のない物語に、光を与えるのはわたしたちだ。
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■ミッシング
監督:𠮷田恵輔
脚本:𠮷田恵輔
撮影:志田貴之
照明:疋田淳
録音:田中博信
装飾:吉村昌悟
衣装:篠塚奈美
ヘアメイク:有路涼子
音楽:世武裕子
出演:石原さとみ、青木崇高、森優作、有田麗未、小野花梨、小松和重、細川岳、カトウシンスケ、山本直寛、柳憂怜、美保純、中村倫也ほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/missing/
(イラスト:水彩作家yukko)