【ほつれる】一度解いて編み直す作業を、どこかで我々はやらねばならない。

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夫との関係が上手くいっていない綿子は、友人の紹介で知りあった木村と逢瀬を繰り返すようになる。しかし綿子のそばで、木村が事故に遭ったことをきっかけに、綿子の気持ちに変化が起こる──。
主人公の綿子を演じたのは、「あのこは貴族」「愛の渦」の門脇麦。監督、脚本を手掛けたのは「わたし達はおとな」の加藤拓也、本作が長編2作目となる。

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恋人ほしいな、と思うことがある。ふとした瞬間──友だちと飲んだ帰りの電車内とか、夫が実家に帰っている夜とかに、それはぷかりと胸に浮かび上がる。すぐにはっとして、途方もない罪悪感に舌打ちをする。

たとえば彼と喧嘩をしたあとだったり、そういう明確な理由があればまだ不埒な考えがちらつくのも説明がつく。ぼくと彼は今年で結婚5周年を迎えるし、婚姻届を出す前を含めたら10年近い付き合いになる。「別れ」が話題に上ったことは、一度や二度ではない。ある程度の交際期間を経ている恋人同士なら、むしろ自然なことだろう。でもそのたび、ひとつずつ話し合い、折り合いをつけ、ここまで歩んできた。

それなのに、なんの前触れも予兆もなく、ふと「恋人ほしいな」が頭を擡げるのはなぜなのか。断っておくけどもちろん実際に行動に移したことはこれまで一度もないし、これからもそうしたいとは思わない。ぼくと彼がモノガミーであるという前提もあるけれどど、なにより夫を愛しているから。彼を傷つけたくないのだ。

映画「ほつれる」の主人公・綿子も、夫への復讐心から不倫した、というわけではないんじゃないか。鑑賞後、新宿ピカデリーから駅へ向かう道すがら、ぼんやりそう思った。

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S H A R E
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ライター。修士(学術)、ジェンダー論専攻。ノンバイナリー(they/them)/日韓露ミックス。教育虐待サバイバー。ヤケド注意の50℃な裸の心を書く。