教える側も、教わる側も、支え合っている。
さて、「不思議の国の数学者」の話をしたい。
本作は、数学が苦手で立場をなくしていた高校生ジウが、かつて天才と呼ばれた数学者ハクソンと出会ったことにより、「正解よりも大切なこと」を学んでいく物語だ。
ジウが数学の知識を活かしてヒーローになるような、華やかなサクセスストーリーではない。
いってみれば、対話の物語だ。
ハクソンは数学者の大切な心得として、数々の大切な言葉をジウに贈る。数学の指導を通し、数学者として大切な「人間や物事の本質」を伝えていくのだ。
そんなハクソンもまた、数学に真っ直ぐ向き合うジウと過ごしていく中で、忘れようとしていた過去の自分と向き合っていく。
純粋な気持ちで数学を学びたいジウと、数学が持つ美しさを信じるハクソン。親子にも親友にも近い「師弟関係」に、私は思わず感涙した。
難問に挑戦し、一生懸命に答えを出そうとするジウに、ハクソンは「間違った問いから正しい答えはでない。問いが正しいかどうかを見極めることも重要なのだ」と言った。
この言葉は、その後のジウに大きな影響を与えることになる。
仮にジウがハクソンと出会ってなければ、「常識」のある大人や社会に丸め込まれてしまっていたかもしれない。
ジウがハクソンから教わった、正解よりも大切なこと。それは「答えを導き出す過程」。
ジウが数学をできるようになることが「正解」なのではなく、数学を学ぶ中で感じ、考えること。それが何よりも大切な「過程」だったのかもしれない。
Q.E.D(証明完了)
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■不思議の国の数学者(原題:이상한 나라의 수학자、英題:In Our Prime)
監督:パク・ドンフン
脚本:イ・ヨンジェ
プロデューサー:ハ・ジョンワン
撮影:パク・ホンヨル
照明:カン・デヒ
音楽:イ・ジス
編集:キム・ソンミン
美術:キム・ヨンヒ
衣装:キム・テヨン
出演:チェ・ミンシク、キム・ドンフィ、パク・ビョンウン、パク・ヘジュン、チョ・ユンソ、タン・ジュンサン、キム・ウォネ、チュ・ジンモ、カン・マルグムほか
配給:クロックワークス
(イラスト:Yuri Sung Illustration)