【トリとロキタ】選択の自由がないということ

osanai トリとロキタ

アフリカからベルギーにやってきたトリとロキタ。血はつながっていないものの姉弟として生きる2人が、社会の逆風を受けながらも懸命に生きる姿を映す物語。
監督は「ロゼッタ」「ある子供」を手掛けたダルデンヌ兄弟(ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ)。トリとロキタを演じたパブロ・シルズ、ジョエリー・ムブンドゥは本作が演技初経験となる。

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ケンブリッジ大学の研究によると、人間は朝起きてから眠るまでの生活において、2万回以上の選択をしているそうだ。起きる、食べる、行動する、眠るなど、私たちは無意識のうちに数々の「選択」をしているのである。

それ以外にも、私たちは住居や職業、友人・パートナーを自ら選択している。自分の願望を果たすため、欲求を満たすため、少しでも幸せに暮らすためなど、理由は様々であろう。

そんな当たり前の「選択の自由」の余地が全くない生活を、想像したことがあるだろうか。

仕事を選べない。
住む場所を選べない。
好きなように生活することができない。
家族に会うことすらできない。

本作「トリとロキタ」は、アフリカからベルギーに移送される途中に出会った二人が、辛く苦しい日々を生きようとする物語だ。姉弟と偽った彼らは、血のつながりはないものの互いを心の支えとして、共に生活する。監督・ダルデンヌ兄弟ならではの、息をすることさえ忘れてしまうような緊張感と共に描いていく。

やりたいことは全部実現させたい!なんて思い、日々を好きに生きている私は、肩身が狭まるような気持ちになった。

自分は一体、どれだけの幸せ者なのだろう?と。

アフリカに住む家族への仕送りのために、ベルギーでビザを取得しようとするロキタ。
ビザを取得するための鍵となるのが、ベルギーに移送される船で出会った、弟分のトリだ。トリはすでにビザを取得しているため、「生き別れの姉弟」を演じ、家族ビザを取得しようとしているのだ。

しかし、パニック障害を抱えるロキタは、うまく姉を演じられず発作を起こし、何度もビザの取得に失敗する。一人でいると不安になり、呼吸が落ち着かなくなるロキタにとって、トリは「精神安定剤」のような存在だった。

トリは賢く、機転が利く男の子で、いつだって大好きなロキタを助けようとする勇敢な子だ。トリと一緒にいる時間は、ロキタにとって何よりも幸せで、安心できるのだった。

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S H A R E
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アパレル業界出身のシステムエンジニア。オンラインコミュニティ「Beauty Ritual」運営。恋愛映画がすきだけど、オールジャンル鑑賞します。