映画「茶飲友達」には、高齢者専門の売春クラブ「茶飲友達(ティー・フレンド)」という組織が出てくる。
組織を束ねる佐々木マナは、心に傷を負いながらも周囲には弱さを見せない、若き女性経営者だ。本作品は、10年ほど前に実際にあった事件をモチーフに作られている。お年寄りは日向でお茶を飲んでいるものだと思っている人々は、衝撃を受けることになるであろう。
言うまでもなく売春は犯罪だ。しかし本作は、死を待つだけの孤独だった高齢者にとって、ティー・フレンドが日々に差し込む光のような存在であり、「生きる希望を待っていた者たち」の希望として描かれている。
妻を亡くした孤独な高齢者の男性は、今日も朝が来てしまったと言わんばかりに起き、いつものように新聞を読む。すると「茶飲友達、募集」と書かれた三行広告を見つける。
一体何のことだろうか?と思いつつ、藁にもすがる思いで電話をかける。
そこは、高齢女性のコールガール(ティー・ガール)が集う、ティー・フレンドだった。
男性は、ティー・ガールが淹れたお茶をすすりながら、胸に秘めた悩みや想いを切々と語る。彼の全てを受け入れるかのように、ティーガールが優しく情事へと誘い、包み込み、癒していく。
行為自体が一番の目的ではない。男性は自分の「生」を「性」で感じ、他人と身体を重ねることで孤独や寂しさを埋めたいのである。若い女の子には代えられない。もう失うものはない「ティー・ガール」だから務まるのだ。
そんな人の「孤独」や「寂しさ」を埋められる存在を「家族」だと信じるのが、岡本玲が演じる佐々木マナだ。
マナには辛く悲しい過去がある。血の繋がった母親と分かり合えず、家族と疎遠になってしまったのだ。自分の心の隙間を埋めるように、ティー・フレンドで働く若者や、ティー・ガールのことを「ファミリー」と呼び、本当の家族のように接してきた。
マナは、スーパーで半額のおにぎりを万引きしようとした高齢者の女性・松子を見かけ、その場を助ける。
松子はお金がないだけではない。万引きをしてでも自分の存在を誰かに知らせたかったのではないかと悟ったマナは、「ファミリーになろう」と松子を誘い続ける。熟慮の末、松子もいつしか「ファミリー」の仲間入りをすることに。
実の母との間に確執があるマナは、次第に松子に自分の思い描く「お母さん」像を重ねていった。
休みの日は一緒に過ごし、松子の家に泊まり、辛かった過去のことだって打ち明けた。
松子はマナと出会い、ティー・フレンドで働き、幸せそうに見えた。