65歳以上人口が、全体の29%を超えた日本社会。かつて風俗業界に身を置いていた佐々木マナは、経営者として高齢者専門の売春クラブ「茶飲友達(ティー・フレンド)」を運営していた。ある日マナは、スーパーで万引きしようとしている、ひとりの女性に声を掛ける──
監督・脚本は「燦燦」「ソワレ」を手掛けた外山文治。主演は岡本玲。
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縁起がいいと言い伝えられている「茶柱」。
4人に1人は高齢者と言われる日本において、高齢者の社会的孤立が社会問題になっている。誰とも会話をしない、近所づきあいをしない、困ったときに頼る人がいない。孤独を抱えながら単調な日々を過ごす高齢者の心境はいかほどだろうか。
変化のない日々を過ごす高齢者たちは、熱いお茶を飲むときに茶柱が一本立っているだけでも、「今日は何か、いいことがあるかもしれない」と希望を感じられるのだ。
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カンヌ国際映画祭にも出品された「PLAN 75」という作品は、少子高齢化対策として、75歳を過ぎたら生死を選べる制度が可決された日本を描いている。
まだまだ元気な78歳の高齢者女性が、身寄りも友達もいない中、社会にしがみつき懸命に生きようとするも、孤独や社会の厳しさに耐えきれなくなってしまう。
高齢者が感じる「孤独」とは、どれだけ寂しく、わびしいものか。
先立たれた故人を独り寂しく、想い続けながら生きなくてはならない。
贅沢しているわけではないのに、年金だけでは足りない。働こうにも用意された仕事は、若者でも嫌がる肉体労働ばかり。
自分が死んだことすら、誰にも気付かれない。
こんな高齢者の実情を、世間や我々はどれだけ認知できているのだろうか?