【フィンガーネイルズ】愛し続けるためには、小石の確認作業の継続が不可欠である。

osanai フィンガーネイルズ

恋愛感情を計測できる技術が開発された世界。愛の“お墨付き”を手にしていたアナだが、パートナーのライアンとの関係にしっくりこない。逆に同僚のアミールのことが気になってきて──。
監督は「林檎とポラロイド」を手掛けたクリストス・ニク。ジェシー・バックリー、リズ・アーメッド、ジェレミー・アレン・ホワイトが出演。

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失敗したくない。裏切られたくないし、傷つきたくない。“生涯を共にするパートナー”についてとなると、その想いは殊更に肥大化する。ゆえにみんな、安心材料がほしいのだ。絶対に大丈夫だという保証がほしい。このひととなら一生添い遂げられるという、証明書がほしい。愛情は、目に見えないかつ、予測のつかないものだから。

映画「フィンガーネイルズ」は、そういう不確かな“愛情”を可視化する方法が発明された世界を舞台にしている。その方法が、生爪をペンチで剥がすというもの。互いの爪をオーブンレンジのような機器に入れると、ふたりの愛情度の確からしさが測定できるのだ。100%、50%、0%といった具合に。100%と50%は陽性、0%は陰性と呼ばれる。ちなみに50%はどちらかの一歩通行な片想いを示す。

「ゴッド・ファーザー」にでも出ててきそうな拷問じみたやりかたにも関わらず、愛情検査は世のカップルにとって当たり前のものとなっている。検査をするひとたちのほうが多数派らしく、よほどの強固な理念やなにかしらの理由がない限りほとんどのカップルが受けるようだ。

主人公のアナとそのパートナー・ライアンも、3年前に検査を受けている。陽性という結果通りの穏やかな日々を送っているが、微妙なズレが生ずる瞬間も否めない。陽性の結果に安心しきっているライアンとは対照的に、アナはふたりのマンネリ状態を憂う。これを打破するために、アナは「教員として小学校に採用された」と嘘をつき、ライアンに内緒で「愛情研究所」に就職する。

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S H A R E
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ライター。修士(学術)、ジェンダー論専攻。ノンバイナリー(they/them)/日韓露ミックス。教育虐待サバイバー。ヤケド注意の50℃な裸の心を書く。