地方都市で働く産婦人科医・ゴロー。“推し”のアイドルであるアイが、彼の前に現れる。「体調不良で休業中」と謳っていたが、実は双子を妊娠中だったのだが──。
赤坂アカ×横槍メンゴによって、集英社「週刊ヤングジャンプ」にて連載中の原作が、2023年4月よりTOKYO MXなどで放送開始。「私に天使が舞い降りた!プレシャス・フレンズ」を手掛けた平牧大輔が監督を務めている。
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【推しの子】のオープニングソングを聞くたびに、「推す」とは何かを考えさせられる。
僕はアイドルオタクだった。
もっと正確に言えば、、乃木坂46の橋本奈々未が推しメンだった。
しかし、かつての希望や推しメンへの情熱は、
大西洋に浮かんでいたアトランティス大陸と同じ様に失われてしまった。
果たして、私が認識していたアイドル像と、彼女の存在が変わってしまったのか。
多分答えは「否」だ。
改めて、アイドルを推すことは、ある種の「絶望」が内包されていると思う。
アイドルを推すことの効用は千差万別であるが、一般的に言われることは
「擬似恋愛」ということである。
1,000円を対価に、10秒ほどの吹けば飛んで行きそうな「世界で一番幸せな時間」を提供してくる。
その時間の中で挨拶をし、顔を覚えられ、名前を覚えられ、あだ名で呼んだり、
うなじの匂いを嗅ぐことで完璧な世界を構築していたと思っていた。
しかし、ある時点から
「もうこれ以上どこにもいけない」というポイントを
感じてしまった。
このアイドルに対しての握手会やチェキでのトークという極小の時間の中で、
自分が相手に語りうる言葉や推しが自分に対して伝えてる言葉の真贋や深さを
私はどうしても捉えることができなかった。
エヴァンゲリオンに於いて、A.T.フィールドが通常兵器では破れなかった
かのように。
「もうこれ以上どこにもいけない」ポイントに達した時
オタクはどうするのか。
2通りしかないと考える。
一つは「推しを変えること」
もう一つは「一般人を好きになること」
前者は永久機関みたいなもので、永続性の依代である。
後者は自殺みたいなもので、本当の他界だ。
このように考えるとアイドルオタクは100%推しを信じるか、
100%諦めるかでしか存在できないと思う。
その自分に対しての微笑みや言葉を100%真実として受け取るか、
100%嘘と感じ諦めながら、推し続けるかの
血を吐きながら続ける悲しいマラソンなのかもしれない。