「脱北した天才数学者」。素性を隠して高校の夜間警備員として働くハクソンが、数学が苦手な高校生ジウに出会う。数学の教えを請いながら、自らの人生を見つめ直していく物語。
主人公ハクソンを演じるのは、「オールド・ボーイ」「カジノ」のチェ・ミンシク。本作が長編商業映画デビューとなるパク・ドンフンが監督を務める。
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私のプロフィールには、「アパレル業界の出身のシステムエンジニア」と記されている。
システムエンジニアの多くは、大学や専門学校などで知識を習得してから、仕事を通じて研鑽を積んでいく。だから「未経験なのに、よくシステムエンジニアになれたね!」と言われることも少なくない。
私が「システムエンジニア」と名乗れるようになったのは、私に開発のことを教えてくれた「師匠」のおかげだ。師匠に出会っていなければ、今の私はない。「不思議の国の数学者」でも、奇跡ともいえる出会いが描かれているけれど、案外、そんな出会いは身近にあるのかもしれない。
少し長くなるが、私の実体験を書きたいと思う。
「プログラミングができても『プログラマー』になれるわけではない」
かつて勤めていたアパレル企業。ずっと憧れてきた業界だったが、働きすぎて心身ともに疲れてしまい、離職することになった。離職後は、幸いなことに「自分らしさ」を取り戻すことができ、縁あって、とある会社の広報として働くことになった。
しばらくして、社内で立ち上げ途中だったWebサービスの担当者が辞めることになった。前任者からの指名があり、なぜか私が後任の担当者としてアサインされることになった。しかしWebサービスの中身のことなど、何も知らなかった。ただ一人、探り探りの日々を送っていた。
そんなある日、社内初のプログラマーが入社した。後に私の師匠となる人だ。
師匠は誰もが知っているゲームや、工場の製造ラインなど、ありとあらゆるシステムの開発業務に携わってきた凄腕プログラマー。見た目からすると「ほんとうにこの人はプログラマーなんだろうか」と思ってしまうくらい、いつも眠そうにしている人なのだけれど。
現状の課題や問題を交えながら、「このサービスをもっとこうしたいんだ!」と何度も伝えた。私自身にシステム関連の知識がなく、歯痒い気持ちを感じていることも。
そんなある日、
「自分でできるようになったら良いんじゃないかな?消しゴムだってパソコンだって、誰かが作っているんだよ」
という言葉が返ってきた。
「自分でできるようになる」。そんなこと、想像したこともなかった。それはつまり、私が直接開発に関わることを意味する。まさかアパレル業界出身の私が、プログラミングを学ぶ日がくるなんて。
考えるよりも先に、私は「システム開発を一から教えて欲しい」と頼んでいた。