スポーツ漫画の金字塔を打ち立てた「SLAM DUNK(スラムダンク)」。1996年の連載終了から四半世紀が経ち、作者・井上雄彦自ら監督を務めた映画が「THE FIRST SLAM DUNK」だ。上映から3ヶ月が経ち、評判も興行収入も“最高評価”として見なされているのは、周知の事実だろう。
だが、本作の面白さとは何だろうか。「『SLAM DUNK』に思い入れがあるから、感動したのではないか?」、そんなノスタルジー的な感慨に耽っている可能性もあり、筆者はイマイチ自信を持てなかった。
その問いの答えを探るべく、実際に高校バスケに取り組む現役高校生に話を聞くことにした。取材したのは、長野県松本深志高等学校バスケットボール部に所属する古田耕平さん(2年)、村上晴瀬さん(1年)、西澤快成さん(1年)の3名。「SLAM DUNK」の登場人物と同じ高校生である彼らは、映画にどんな感想を抱いたのか。バスケの魅力とともに話を窺っている。
長野県松本深志高等学校
明治9年7月、「第17番中学変則学校」として創設された長野県松本市にある公立高校。自主・自立を掲げる「自治の精神」を教育理念に掲げている。本記事で紹介するバスケットボール部は、令和4年度長野県新人体育大会でベスト8に進出するなど、最近力をつけてきている。
古田 耕平(ふるた こうへい)
高校2年生。ポジションはセンター。クラスの友人とともに、小学3年生の夏からバスケを始める。
村上 晴瀬(むらかみ はるせ)
高校1年生。ポジションはスモールフォワード。中学の部活動でバスケを始める。
西澤 快成(にしざわ かいせい)
高校1年生。ポジションはガード。小学2年生のときにバスケを始める。
THE FIRST SLAM DUNK
日本国内のシリーズ累計発行部数が1億2000万部以上、バスケ人気に大きな影響を与えた漫画「SLAM DUNK」。映画化に際し、作者の井上雄彦が自ら監督を務め、アニメ化では放送されなかった「湘北 対 山王工業」の試合を描いたことで話題を集めた。特設サイト「COURT SIDE」では、スタッフやキャストの映画づくりへの思いが掲載されている。
──
バスケットボールという競技の魅力とは?
──皆さんにとって、そもそもバスケの魅力とは何ですか?
村上 晴瀬さん(以下、村上):バスケの魅力は試合がダイナミックに動くことです。サッカーや野球に比べて点数がたくさん入るし、誰でも得点できるチャンスがある。プレー中も、試合を観ていても、試合の攻防に盛り上がれるスポーツだと思います。
古田 耕平さん(以下、古田):勝ったときの喜びを、チーム全体で味わえるのが楽しいですね。バスケはコートに5人しか出られないので、メンバーがひとり違うだけで、全く違うスタイルのチームになります。5分の1の重みがある分、個人に集まる期待も大きいと感じます。
西澤 快成さん(以下、西澤):僕は小学2年生のとき、兄の影響でバスケを始めました。中学校のときまでは「いかに自分が上手くなるか」に関心がありました。高校では、考えてプレーすることを求められます。チームの戦術を理解した上で、どうチームが動いていくべきか。バスケというスポーツの奥深さに気付くことができました。
──村上さんは、バスケを始めた影響が「SLAM DUNK」なんですよね?
村上:小学6年生のときに、母が漫画を紹介してくれました。夢中になって全巻読んで、「ああ、バスケってかっこいいな」と。それで中学からバスケをやろうと決めたんです。
西澤:僕も漫画は好きで、小さい頃からずっと読んでいました。「SLAM DUNK」が映画化されると聞いたときは、すごく嬉しかったですね。
──皆さんが在籍する松本深志高等学校は進学校ですが、バスケにも力を入れていますよね。
古田:勉強と部活、両方に力を入れている人が多いです。先輩たちも、全国各地の大学に進学しています。高校の近くには信州大学もあり、進学先として志望する友人もいますね。
村上:松本深志は、生徒の自主性を尊重する学校です。髪型や服装などに関する校則はほとんどありません。バスケ部でも、「メリハリをつけて学校生活を送ろう」と生徒自身が決めて活動しています。
西澤:松本市は山に囲まれた盆地で、夏は暑く、冬は寒いんです。バスケに適した気候とはいえませんが、夏は練習開始時間を早めにするなど、工夫しながら練習に取り組んでいます。